andReno
リノベーションモデルハウス
築70年の古民家リノベーション。瓦屋根に土壁づくりの一般的な古民家。適宜メンテナンスを重ね、維持されてきた住まいでした。家族構成も変化し、住まい方にも変化が生じています。地域の気候も変化してきており、冬はより寒く夏はより暑い。ライフスタイルに合った快適な住まいにリノベーションすることがミッションとなりました。
今どきの住まいのデザインとは異なりますが、昔ながらの安定した味のある佇まい。外観を大きく変更することなく快適で住みやすい間取りにバージョンアップすることがandRenoに求められた仕事となります。
andRenoのリノベーションは、既存の建物の良さを生かしながら最小限のリノベーションをして快適で楽しい暮らしを実現することにあります。今回の建物も春や秋などの陽気の良い季節には境界外の和室空間も暮らしの範囲に加えられるよう工夫しています。リビングから和室、そして縁側から庭へと空間のつながりを意識しています。
リビングと和室との境は断熱サッシで区切り、冬の寒さや夏の暑さから居住空間を守るように設計されています。季節によって、暮らしのスケールを変化できるようにすることで、既存住宅の良さも最大限活かす設計にしていくことが大切だと考えています。
住まいには家族の歴史が刻まれています。その歴史をしっかりと受け継ぎながらリノベーションすることで、家族の思い出も残せると思っています。
断熱エリアは最小に設計することで、工事費のイニシャルコストと冷暖房のランニングコストを下げることを意識しています。断熱エリアをなるべく小さくすると、当然リビング空間も小さくなりますが、設計の工夫で開放性を確保していきます。今回の設計的な工夫は「勾配天井」。古い住宅は天井高が低いことが多く、既存の天井高のままで断熱施行を計画すると断熱材の厚みでさらに天井高が下がってしまいます。新しい暮らしに開放感を作り出すために勾配天井としました。
天井を剥がすと、既存住宅の古い梁が出てきました。設計段階では、古い梁は見えていない為、現場の大工さんの技術を頼りながら施工を進めていきました。現しの構造で施工すれば、気密工事が難しくなりますが大工さんの施工力を信じて勾配天井にしていきます。古い梁が衣装的ににも味となり重厚感のあるリビング空間が実現されました。
既存の窓の高さや天井高をイメージすると、リビング空間のくつろぎ方はソファではなく、床に座布団の座位良い。座位の高さで暮らすことで、勾配天井と古い梁が楽しく感じられます。家具や照明は、あえてアイアン系のものを選択し新旧の調和を楽しむコーディネートとしました。床やテーブルのカラーは、既存住宅のトーンと馴染むようダークな色調に統一しています。
設計を考える際は、メインとなる空間のパースを描きます。完成イメージを想像することで、お客様と空間認識を高めていきます。リノベーションは、暮らしのイメージを共有することから始まると考えています。
まずは、既存住宅の大きさや構造の把握をしていきます。既存住宅の把握ができたところで、断熱エリアの検討をしていきます。今回は、新たに水回り（お風呂）を設置する計画としました。脱衣所などは、冬場最も寒くなるエリアとなる為、生活動線を考慮し断熱エリアの中に計画することとしました。
階段は断熱施行上、最も工事が難しくなる場所となります。階段エリアとリビングエリアをしっかり断熱することで暮らしの温熱環境を守っていきます。生活空間は決して広いとは言えませんが、回遊動線を確保することなどで、行き止まりをなくし生活しやすい設計としています。最小限のリノベーション計画で豊かな暮らしの時間を多くすることが、andRenoのリノベーション思想なのです。
一般的に「モデルハウス」というと綺麗な、どこか生活感を感じさせない憧れの家、というイメージをしませんか？モデルハウス案が持ち上がったときに、）綺麗に出来上がって、インテリアを設えて、素敵な完成イメージをご覧いただきたいという想いもありながら、見る方の「現実感」を大切にしたいという想いもありました。リフォーム・リノベーションは「今の家」をベースに暮らしを「良く」するための手段ですよね。新築と異なり、スタートラインが家によって様々です。お住まいの方は、「今の家」の印象が特に強いと思います。自分たちの家が、実家が、おじいちゃんの家が、リノベーションしたらどう変わるのか…！？想像するのはとても難しい。だからこそ、同じスケール感（目線）で体感できる「現実感」のあるモデルハウスにしたいと思いました。
私たちは、住む方の暮らしに寄り添うのが「家」だと思っています。ちゃんと住む方が居るモデルハウスにしたい…リノベーションをして暮らしを快適にしたいという方を探し始め、一朝一夕には見つからない中でしたが、もともとのご縁から「考えてもいいよ」とお返事をいただいたのが、このモデルハウスのお施主様（T様）です。築60年以上の古屋には数十年誰も住んでおらず、Ｔ様は同じ敷地に別の大きな家を建ててお住まいでした。古屋の1階にはブラウン管テレビやタンスや…物がそのまま。2階の部屋を倉庫として使うために時折出入りしているという程度でしたが、良い材を使ってしっかりした造りになっているから…と、解体せずにのこしていました。
最初の調査の際にＴ様と一緒に拝見し、「できれば孫たちが来た時にみんなで集まれるようにしたいんだよ。“いまふう”の家は大人数で集まれないから」とのこと。また、西からの太陽光がメイン、という立地のため「明るくしたい」というご要望がありました。その後T様と間取りの話を揉み込み…「イメージがね（できない）。施工も難しそうだし、そんなことする必要ないよ」とおっしゃるＴ様に、どうしても…とお願いしたのが「勾配天井」でした。
みんなで集まるところを気持ちよさ、居心地の良さを感じてほしく、もともとの構造を活かして造らせていただきました。その空間は大きすぎず「ちょうどよい」スケール感になり、残した古材が新旧の雰囲気をつないで、隣接するお座敷へと視線を拡げてくれるものとなりました。「（勾配天井にして）やってよかったよ。」のT様の一言が沁みました。
外観もそのまま、玄関を開けると「おばあちゃんちみたい」といわれる雰囲気やにおい。そしてその先の扉をあけると…新旧の対比や、施工過程の記録、「うちも！あるある！」というお話、そして特に夏冬は断熱気密エリアとの温熱環境の違いを体感することができるリノベモデルハウス。訪れると、あっという間に時間が過ぎていきますよ。
設計 小池 美緒
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